発明 Vol.105 2008-9
判例評釈
プロ野球選手の肖像権使用許諾権限事件
知的財産高等裁判所平成20年2月25日判決
平成18年(ネ)10072号肖像権に基づく使用許諾権不存在確認請求事件控訴事件
(原審・東京地裁平成17年(ワ)第11826号、東京地裁平成18年8月1日判決)
判例時報1957号116
久留米大学法学部特任教授大家重夫
事実の概要

1.原告等33名はプロ野球選手で、被告等は原告がそれぞれ所属する球団10社である。
 原告等は、被告らがプロ野球ゲームソフト及びプロ野球カードに関して、第三者に対し、原告等選手の氏名及び肖像等の使用を許諾しているが、各被告等はその使用許諾をする権限を有しないことの確認を請求した。
 被告等は、統一契約書16条(以下、本件契約条項)により、原告等の氏名及び肖像の商業的利用権たるパブリシティ権が被告らに譲渡され、または被告等に独占的に使用許諾されていると主張した。

プロ野球・統一契約書
第16条(写真と出演)球団が指示する場合、選手は写真、映画、テレビジョンに撮影されることを承諾する。なお、選手はこのような写真出演等に関する肖像権、著作権等のすべてが球団に属し、また球団が宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても、異議を申し立てないことを承認する。
なお、これによって球団が金銭の利益を受けるとき、選手は適当な分配金を受けることができる。
さらに選手は球団の承諾なく、公衆の面前に出演し、ラジオ、テレビジョンのプログラムに参加し、写真の撮影を認め、新聞雑誌の記事を書き、これを後援し、また商品の広告に関与しないことを承諾する。

 これに対し、原告等は、本件契約条項は、商品化型利用を含まないこと、原告の肖像権を一方的に剥奪するもので不合理な附合契約であり、民法90条に違反し無効である、また独占禁止法2条9項5号に基づく公正取引委員会が定めた一般指定14項の優越的地位の濫用に当たる行為であるか、または一般指定13項の拘束条件付取引に当たる行為であって、健全な取引秩序を乱し、公正な商慣習の育成を阻害するものとし公序に違反し、無効であるなどと主張した。


1審判決
1.本件契約条項の解釈について
 本件契約条項が制定された経緯、その後の運用状況を調べ、本件契約条項1項の「宣伝目的」は、広く球団、プロ野球の知名度の向上に資する目的をいい、選手の氏名・肖像の商業的使用ないし商品化型使用もそれが球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する限り、これに含まれるとした。
 3項は、選手が所属球団の承諾なしに公衆の面前に出演しないこと等の不作為義務を定め、球団は合理的理由なしに承諾しないことがあってはならないとし、次のように述べた。「なお、氏名及び肖像が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利が元来選手の人格権に根ざすものであることにかんがみれば、球団において合理的な理由なく承諾しないことがあってはならない。」(88頁)。
 よって本件契約条項は商業的使用ないし商品化型使用を含め、球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的の下、選手が球団に対してその氏名及び肖像の使用を独占的に許諾したものと解するのが相当であるとした。
 野球ゲームソフト及びプロ野球カードへの選手の氏名・肖像の使用は、球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的で行われ、本件契約条項1項の「宣伝目的」に含まれ、選手においても長きにわたり氏名・肖像の管理を明示または黙示に許容してきており、被告等は野球ゲームソフト及びプロ野球カードについて、原告等の氏名・肖像を第三者に使用許諾する権限を有するとした。
2.不合理な附合契約について
 本件契約条項は、選手が、主体的に商品広告等へ関与する途が開かれており、かつ現に球団から使用料の分配が行われており、交渉により球団と選手等との間の使用料の分配率の増減変更を実現する余地もあり、本件契約条項が不合理であるとまでは言い難く、本件条項が公序良俗に反し民法90条により無効との原告の主張は理由がないとした。
3.独占禁止法違反について
 独占禁止法19条違反の契約の私法上の効力については、その契約が公序良俗に反する場合は格別として、同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではないとした。
 被告等球団が優越的地位にあるが、本件契約条項の内容が不合理とは言い難く、運用も原告等の主張する独占禁止法一般指定14項に当たらず、したがって独占禁止法2条9項5号にも当たらない。
 原告等の主張する独占禁止法一般指定13項の拘束条件付きの取引であるが、本件契約条項は不合理とは言い難く、また運用も一般指定13項に当たらず、したがって独占禁止法2条9項4号に当たらないとした。

《2審》
 控訴人(原告)等は、(1)原判決を取り消す。(2)各被控訴人は、それぞれ対応する別紙関係目録記載の各控訴人との間において、プロ野球ゲームソフト及びプロ野球カードについて、同各控訴人の氏名、肖像を第三者に対し使用許諾する権限を有しないことを確認する。(3)訴訟費用は第1、2審を通じて被控訴人等の負担とすることを求め控訴をした。
 控訴人等は、本件契約条項は独占禁止法2条9項1号に基づく一般指定1項2号の共同の取引拒絶に該当し無効であるとの争点を追加した。
〔主文〕
1.本件控訴を棄却する。
2.控訴費用は控訴人等の負担とする。

2審判決の要旨
1.本件訴訟の対象は、「平成17年12月から平成18年1月にかけて更新された平成18年度の各選手契約16条」「に基づく契約上の義務として、球団が上記使用許諾権限を有しないことの確認を求めるものと解される。」
 「そして、本件のように契約書が作成された場合の具体的契約条項の解釈に当たっては、最も重視されるべきはその契約文言であり、そのほか、そのような契約条項が作成されるに至った背景事情、契約締結後における契約当事者の行動等を総合的に判断して、その文言の正確な意味を判断すべきものである。」
 「また、人は、生命・身体・名誉のほか、承諾なしに自らの氏名や肖像を撮影されたり使用されたりしない人格的利益ないし人格権を固有に有すると解されるが、氏名や肖像については、自己と第三者との契約により、自己の氏名や肖像を広告宣伝に利用することを許諾することにより対価を得る権利(いわゆるパブリシティ権。以下「肖像権」ということもある。)として処分することも許されると解される。」(218頁)

2.「統一契約書が初めて作成された昭和26年当時の本件契約条項に相当する規定は、米国メジャーリーグの大リーグ契約条項を参考にして起草されたもので」「当時、我が国において『パブリシティ』(選手の氏名及び肖像が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利)という概念及びその用語になじみがなく、」「英語の『publicity purposes』を『宣伝目的』と翻訳した」(219頁)
 「統一契約書が制定される以前から、球団ないし日本野球連盟が他社に所属選手の氏名及び肖像を商品に使用すること(商業的使用ないし商品化型使用)を許諾することが行われており、本件契約条項に相当する当初の規定も、かかる実務慣行のあることを前提にして起草された」「昭和26年当時、選手の氏名及び肖像の利用の方法について、専ら宣伝のために用いる方法と、商品に付して顧客吸引力に利用する方法とを明確に峻別されていたとは考えがたく『宣伝目的』から選手の氏名及び肖像の商業的使用ないし商品化型使用の目的を除外したとする事情を認めることはできない。」「本条契約条項1項にいう『宣伝目的』は広く球団ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的をいい、『宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても』とは、球団が自己ないしプロ野球の知名度の向上に資する目的でする利用行為を意味するものと解される。」

3.「選手の氏名及び肖像の商業的使用ないし商品化型使用は、球団ないしプロ野球の知名度の向上に役立ち、顧客吸引と同時に広告宣伝としての効果を発揮している側面があるから、選手の氏名及び肖像の商業的使用ないし商品化型使用も、本件契約条項の解釈として『宣伝目的』に含まれる」

4.「選手の肖像を広告宣伝に利用する場合でも、販売する商品に商業目的で利用する場合でも、肖像に当該選手の氏名を付して利用する形態が多く存在することにかんがみると、本件契約条項1項の『肖像権、著作権等』のうちには、氏名を利用する権利も含まれると解すべきである」

5.「以上によれば、本件契約条項により、商業的使用及び商品化型使用の場合を含め、選手が球団に対し、その氏名及び肖像の使用をプロ野球選手としての行動に関し(したがって、純然たる私人としての行動は含まれない)、独占的に許諾したものと解するのが相当である(なお、上記のとおり純然たる私人としての行動についての権利は選手個人に留保されているから、選手から球団に上記権利が譲渡されたとまで解することはできない。)。」(221頁)

6.両当事者からの意見書は、本件契約条項の解釈に関する認定を左右しない。
 控訴人側提出の早稲田大学K(226頁)(228頁ではT)教授の意見書は、「『プライバシー権とパブリシティ権は等しく人の人格権から派生するものであって人格権の商品化から生じた人格権の持つ財産的利益の排他的支配権と解するのが相当である』とした上で、『独占的使用権を他者に与えるとしても、本人の支配がまったく失われるような形で商業的使用・商品化型使用を含めて包括的に氏名・肖像の有する経済的利益の排他的支配権であるパブリシティ権の独占的使用を他者へ許諾する契約(契約条項)は、原則的に認められない』とし、『このような包括的な独占的使用権の許諾を認める場合には、派生権であるパブリシティ権の実現(使用)の場で、母権である本人の人格権と派生権であるパブリシティ権が相互対立する現象が生じることになる』とする」、そして、「『本件契約条項を認めるとしてもその範囲は制限的に解釈されるべきであり、選手が自らの意思で自己の人格的アイデンティティを商業的利用に供することを制限・禁止する内容を含まないと解する』とする、また本件契約条項を含む選手契約についても約款による契約であって、制限的に解釈されるべきで、本件契約条項をパブリシティ権の本質と相容れない、また約款作成者に有利な拡大解釈はとるべきではない」とする。
 被控訴人側提出の慶應義塾大学U教授の「鑑定書」は、「本件契約条項の『すべてが球団に属し』との文言からすれば肖像等に関する使用許諾よりも譲渡になじみやすく、その内容も『写真・撮影フィルムに具体化されたところの肖像、容姿についての経済的利用に関する処分権限の全面的な委譲と、氏名に関する商標的・装飾的利用権限の委譲にすぎず』、このようなパブリシティの一部の譲渡については認めて差し支えなく、また解釈として独占許諾と解することも可能である、」「本件契約条項は十分に合理的かつ有効であるとする」。
 被控訴人側提出の専修大学V教授の「鑑定意見書」は、「肖像や氏名の使用を決定することができるのはその本人のみであり、これは人格権から導きだされるところ、その商業的利用に関しては、その使用が同意された後は、本人の人格権を不当に害するような使用態様がない限り、人格権の法理に服することなく、人格権からは独立した財産的権利として、譲渡等、財産法の枠内で扱われるから、本件契約条項により球団は選手の氏名、肖像に関する権利の独占的使用許諾を受けている、また金銭の支払いを受けている等の現実の運用にも照らし条項が無効ともえない、宣伝目的には、選手の肖像等が野球カード等に使用されてもこれが公衆の関心をつなぎ止める機能を果たすことの変わりはないから、商品化型利用も含まれるとする」
 これについて、「(被控訴人側)U教授、V教授の上記意見書は当裁判所の前記判断と矛盾するものでもなく、また控訴人ら提出するT教授(226頁のK教授と思われる)の意見書も一般論としては同様であって、本件契約条項の解釈に関する前記認定を左右するものではない。」

7.本件契約条項は不合理で、民法90条に違反し無効であるか。
 当裁判所も原審と同じく本件契約条項が不合理な附合契約として民法90条に違反し無効となるものではないと解するもので、その理由は、原判決99頁17行から109頁16行記載のとおりとする。すなわち、「・・・・・・プロ野球発展のため一定限度の集合的処理が望ましい。本件契約条項の定めは、球団が多大の投資を行って自己及び所属選手の顧客吸引力を向上させている状況に適合し、投資に見合った利益の確保ができるようかかる顧客吸引力が低下して球団または所属選手の商品価値が低下する事態の発生を防止すべく選手の氏名及び肖像の使用態様を管理するという球団側の合理的な必要性を満たし、交渉窓口を一元化してライセンシーの便宜を図り、ひいて選手の氏名及び肖像の使用の促進を図るものであるから、各球団において本件契約条項を適用し、これに従った運用を行うことには、一定の合理性がある。」
 「選手が主体的に商品広告等へ関与する途が開かれており、かつ現に球団から使用料の分配が行われており、交渉により球団と選手らとの間の使用料の分配率の増額変更を実現する余地もあり得る・・・・・・これが不合理であるとまではいい難い。本件契約条項は、不合理な内容の附合契約であるとはいえない。」「本件契約条項は、肖像権を被告らに帰属させるものではなく、球団が独占的な使用許諾権を有するものと解釈すべきであるから」(浦川道太郎論文は)その前提を欠く。「本件契約条項の規定が公序良俗に反し民法90条により無効であるとの原告らの主張は理由がない。」(原判決108頁以下)。
 当審で付加すれば、「本件契約条項を前提とすると選手が肖像権管理に関し全く関与することができないと認めることもできない。」(230頁)「しかし、選手が商業的利用も含め自らの肖像権を生来的に有することは所論のとおりであるが、これを自らの判断で契約により球団等の第三者にその管理を委ねることも許されるのであり、本件は、前記のとおり、そのような意味における肖像権が選手から球団に対し契約により独占的利用を許諾したと認めることができるのである。」「選手の肖像ないし氏名の宣伝目的での使用を球団が一括管理することを前提とした本件契約条項の内容が、それ自体として不合理といえないことも前記のとおりである。」(232頁)

8.本件契約条項は独占禁止法違反として無効となるか。
 当裁判所も本件契約条項が不合理な附合契約として民法90条に違反し無効となるものではないと解するもので、その理由は、原判決109頁17行から112頁18行記載のとおりである。なお、当審での控訴人の主張に鑑み、付加的に判断する。
ア.独占禁止法19条違反の契約の私法上の効力
 「直ちに無効とすることは同法の目的に合致すると言い難いからである」(最高裁昭和52年6月20日民集31巻4号449頁)。
イ.球団が、選手会に対して、肖像権等のライセンスビジネスを行うことを拒絶させているとの点につき、本件契約条項は不当ではなく、共同の取引拒絶に該当しない。
ウ.選手会は、野球機構に対し、選手のパブリシティ権を選手会が暫定的にライセンスを行う等の提案をしているというが、球団が行ってきた選手肖像・氏名管理について、その一部でも選手ないし選手会が行うとすることについて、選手ないし選手会と球団ないし野球機構とで真摯な話し合いがなされてきたと認めるには疑義がある。
エ.選手会が野球ゲームについて肖像権ライセンスを行って、野球機構が委託する(株)バップと(株)ピービーエスが行っているのは公正な競争を阻害すると主張するが、単純に実施料率の店から比較して公正か否かを判断できない。控訴人の主張は採用できない。
オ.控訴人等は、当審において、早稲田大学法学学術院L教授の意見書(球団は、選手をしてプロ野球選手会ないし他の管理会社等にパブリシティ権のライセンスをさせないようにしており、これが共同の取引拒絶に該当する、目的の正当性についても疑問があるとする。)及び、慶應義塾大学産業研究所M准教授の意見書((1)不当な拘束条件付取引に該当する、(2)優越的地位の濫用に該当する、(3)正当な理由があるかについてであるが、各球団についての必要性・合理性で、1条に定める独禁法の目的から正当な目的として是認されるものではない、とする。)を提出した。
 しかし、独占禁止法違反の控訴人等の主張は、既に検討したとおりで、本件契約条項を無効と解することはできない。以上のとおり、控訴人等の請求は、いずれも理由がない。結論を同じくする原判決は相当であるから、本件控訴を棄却する。

評釈
1.この事件の本質は、「プロ野球・統一契約書」の第16条(写真と出演)「球団が指示する場合、選手は写真、映画、テレビジョンに撮影されることを承諾する。なお、選手はこのような写真出演等に関する肖像権、著作権等のすべてが球団に属し、また球団が宣伝目的のためにいかなる方法でそれらを利用しても、異議を申し立てないことを承認する。」という条項をどう解するかである。
 通常、「属し」は、「帰属する」という意味で、所有権など権利や財産で、移転できるものについて、どちらの側の領域のものとするという場合に使い、これを明瞭にさせる言葉である。といって、移転できないものを、移転させるわけにはいかない。
 すなわち「選手はこのような写真出演等に関する肖像権、著作権等のすべてが球団に属し、」とあった場合、この文言からは、「肖像権、著作権等」の中で、「譲渡しうるもの」は、すべて球団に帰属し、「著作者人格権」のような「譲渡しえないもの」(著作権法59条)は、選手のほうに残存するというのが素直な文言解釈と思われる。
 したがって、「肖像権」について、これを人格権としての肖像権であれば、選手に全部残存し、「肖像権」には、「肖像財産権(肖像パブリシティ権)」と「肖像人格権」とに分けて考えられるならば、「肖像財産権(肖像パブリシティ権)」は、「球団」に帰属する、ということになる。
 しかし判決は、「最も重視されるべきはその契約文言であり、」といいながら、「選手が球団に対して独占的に許諾したもの」と解している。この結論に至る理論構成がどうなっているかを吟味したい。
 その前に、本判決は、統一契約書16条の「肖像権」と関連の深い「パブリシティ権」をどうとらえているのであろうか。

2.「人は、生命・身体・名誉のほか、承諾なしに自らの氏名や肖像を撮影されたり使用されたりしない人格的利益ないし人格権を固有に有すると解されるが、氏名や肖像については、自己と第三者との契約により、自己の氏名や肖像を広告宣伝に利用することを許諾することにより対価を得る権利(いわゆるパブリシティ権。以下「肖像権」ということもある。)として処分することも許されると解される。」(218頁)と定義した。
 この定義では、人格権から派生ないし流出した「自己と第三者との契約により、自己の氏名や肖像を広告宣伝に利用することを許諾することにより対価を得る権利(いわゆるパブリシティ権。以下「肖像権」ということもある。)」を人はもち、これを「処分することも許されると解される。」という。
 次のような疑問がある。
(1)ここには、独占的、排他的な財産権であるという表現がない。従来の判決例と異なる理解をしているとの疑問を生じるのでないか。(注1)
 人格権である肖像権を保有している者が、広告宣伝のために肖像使用の対価を取ってよい、甲から徴収してもよい、乙からでも取れるということしか述べていない。独占的、排他的な構成をとり得ることを述べて初めてパブリシティ権といえるのでないだろうか。
 この表現では、肖像の使用に対し、「対価を受領する権利」「対価受領権」のみ意味するということであるが、それでいいのであろうか。
(2)「(いわゆるパブリシティ権。以下「肖像権」ということもある。)」(218頁)というが、パブリシティ権は、肖像、氏名が商品化されたり、宣伝広告に使用されたりすることについての、排他的財産権で、俳優タレント等が自己の肖像の無断使用について、その権利に基づき侵害行為に対して、差し止め及び侵害物件の廃棄を求め得る権利である(東京高裁平成3年9月26日判決判時1400号3頁)(「パブリシティ権」の言葉を判決文のうえで、最初に用いたのは、東京地裁平成元年9月27日判決(判時1326号137頁、アイドルグループ光GENJI事件)である。)。
 「(いわゆるパブリシティ権。以下「肖像権」ということもある。)」は、言葉の置き換えで、自由とはいえるが、この置き換えは、用語の使い方としていささか不適切ではないだろうか。
 「パブリシティ権」は、財産権であり、「肖像権」は、従来、人格権としての肖像権のみを指していた。パブリシティ権を「肖像権」に置き換えるとすれば、「肖像パブリシティ権」とすべきである。
 肖像権は、ドイツ法に由来するもので、みだりに肖像を作成、利用されない人格的権利として用いられることが多い。パブリシティ権は、米国法に由来する財産権ないし、財産権的性質をもつ権利である。
(3)218頁の「処分することも許されると解される」という表現は、パブリシティ権を財産権と把握しているようであるが(「処分」とは売却、譲渡を含むというのが一般の理解である。)、本判決は、財産的権利とする専修大学V教授の意見書と同じかどうか触れるべきである。判決は、パブリシティ権を「対価受領権」と解し、これは「処分」の対象になるという意味であろうか。
 判決は、財産権としてのパブリシティ権を認めず、人格権のみからなる「肖像権」及び人格権から派生する「肖像利用権」を認め、その「処分」は認められるとするのであろうか。218頁の「処分」される「権利」はどんな権利か、説明が不足している。
 パブリシティ権の譲渡性、移転性については、「黒夢」事件(注2)があり、阿部浩二教授が早くよりこれを認める(後掲578頁)。
(4)228頁の被控訴人側U教授、V教授の意見書と控訴人側のT教授の意見書と当裁判所の判断が、矛盾しないとは、球団が選手の肖像等の「使用許諾をする権限を有する」点については共通であるということである。16条の「肖像権、著作権等のすべてが球団に属し」という文言では、財産権である肖像パブリシティ権、著作財産権は、なんらの行為または処分を要せずして法律上当然に移転の効果が第三者にも発生するということを意味し、これは、パブリシティ権が財産権であるとし、「すべてが球団に属し」との文言から「使用許諾よりも譲渡になじみやす」いとするU教授の意見と(パブリシティ権)を「人格権から独立した財産的権利」としてとらえるV教授の説を挙げている。球団が(使用許諾をする権限がある)という一点が共通するから、裁判所の「判断」と矛盾するものでなくというが、各意見書の結論のみでなく、理論構成を整理し、判決の理論構成を説明し、対比すべきである。

3.221頁で、「純然たる私人としての行動についての権利が選手個人に留保されているから、選手から球団に上記権利が譲渡されたとまで解することはできない」は理解し難い。
 選手がパブリシティ価値をもち、(肖像)パブリシティ権を有すること、そのパブリシティ権を譲渡または使用許諾することとパブリシティ権の行使でない活動が自由であることは、別次元の話である。私人としての行動は、統一契約書の問題外である。人格権である肖像権に関することで、別次元の問題である。

4.文言からは、「権利が譲渡された」というのが素直な解釈である。(注3)もし、221頁のように選手が球団に「独占的に許諾したもの」と解するのであれば、肖像権について、財産権はなく、人格権としての肖像権から派生する「肖像の使用の許諾権限」を球団に委任し、続く著作権等は(著作財産権)などのすべてを球団に譲渡したというのであろうか。
 1審は、今までの経緯などから、選手による明示ないし暗黙の意思表示により肖像権(パブリシティ権)について、球団へ「独占的に許諾した」と解しているが、2審の「独占的許諾」の根拠はよく分からない。
 球団が独占的に使用許諾権をもつとした根拠は、221頁「3(2)ウ」であろう。「本件契約条項により」「選手が球団に対し、その氏名及び肖像の使用をプロ野球選手としての行動に関し(したがって純然たる私人としての行動は含まれない)、独占的に許諾したものと解するのが相当である(なお、上記のとおり純然たる私人としての行動についての権利は選手個人に留保されているから、選手から球団に上記権利が譲渡されたとまで解することはできない)」は理解し難い。

5.232頁に「選手が商業的利用も含め自らの肖像権を生来的に有することは所論のとおり」とある。
 2審は、パブリシティ権の保有者は、天賦の、生得のものを有する者に限定する趣旨であろうか。パブリシティ価値の形成については、選手自体のその後の精進、鍛錬があり、また、球団がコーチをつけ、出場の機会を与え、選手を大衆に宣伝し、これにより選手に励みを与え、成長させ、パブリシティ価値を増大させることに寄与している。ちょうど、職務発明における会社と発明者従業員の立場に似ており、単なる雇用者、被雇用者との関係だけで説明できない。本件契約書について、その点からも球団が独占的使用許諾権ないしパブリシティ権を有しても当然であるとの議論があり得るし、この判決文にはその点の説明が欠けている。
 東京高裁平成18年4月26日判決(ブブカ・スペシャル7事件)(注4)は、「当該芸能人がその固有の名声、社会的評価、知名度等を表現する機能がある肖像等が具有する顧客吸引力に係る経済的価値を独占的に享受することは、当該芸能人が努力した上記のような鍛錬、労苦等のもたらす当然の帰結であるからである。」「著名な芸能人の上記のような法律上の地位は、パブリシティ権と称される。」とする。

6.パブリシティ価値の形成について、球団の寄与もあるとすれば、またパブリシティ権について、球団への譲渡を認めるならば、選手と球団の準共有という考え方もあり得る。五十嵐清教授は、「パブリシティ権の主体は、芸能人本人であり、プロダクションは芸能人よりパブリシティ権の一部譲渡を受けたと解すべきであろう。」として、一部譲渡を認めておられる(「人格権法概説」(有斐閣・2003年)187頁)。

7.1審、2審の解釈は、肖像・氏名パブリシティ権の譲渡を想定した他のスポーツ団体、芸能団体の規則(注5)において、権利が「帰属する」「属す」あるいは「委譲する」(これは英語のassignの翻訳であろう)という場合でも、「権利の独占的許諾」という解釈をすべきであるということになり、影響は大きい。

8.221頁に「本件契約条項が選手の肖像の利用に関する、球団と所属選手との間に存する唯一のさだめで」「選手の肖像を広告宣伝に利用する場合でも、販売する商品に商業化目的で利用する場合でも、肖像に該当選手の氏名を付して利用する形態が多く存在することのかんがみると、本件契約条項1項の『肖像権、著作権等』のうちには、氏名を利用する権利も含まれると解すべきである。」としている。
 確かに、氏名は、肖像とともに使用される場合が多い。判決のいうように、人格権である氏名権と氏名パブリシティ権がここに含まれていると解される。
 なお、氏名パブリシティ権のみが問題となるケースもある。(注6)

9.本件契約条項は不合理で、民法90条に違反し無効であるか。判決の述べるとおりである。

10.本件契約条項は独占禁止法違反として無効となるか。判決の述べるとおりである。

11.筆者は、文言を重視し、素直に解釈し球団へパブリシティ権が譲渡されている旨の判決で良かったと考える。パブリシティ権を認めるがその譲渡性を認めないというならば、その理由を述べるべきであったと考える。
 また、丹羽繁夫氏がNBL858号にていわれるように、「管理主体が明確にされ、当該管理主体が当該権利を管理する権限のあることをその使用を希望する第三者に保証し、当該第三者への使用許諾の条件が明確にされる」ことが重要である。
 そして、強力な管理主体を構成するためには、所属する個人と団体が、「権利を共有」すなわち「準共有」という形態もあってよい。そのためにも、パブリシティ権の「譲渡」という法律構成を認めるべきであった。
 丹羽繁夫氏がいうように、選手がパブリシティ権をもつのか、球団なのかは内部問題である。問題は、パブリシティ権の内実をどう充実させるか、パイをどう大きくするか、そのために適切な管理機構をどう構築するかである。商業的利用を希望する第三者に明確なルールを示し、適切、迅速に対応する管理体制を作るかである。
 パブリシティ権と親縁性をもつ著作権管理の分野で、日本音楽著作権協会は、年間約1100億円を徴収するが、音楽著作権を管理のために作詞作曲家から著作権の(信託的)譲渡を受け、「著作権」を単独でもっている。使用料規程という明確なルールをもち、500名の事務局員が監視と徴収を行い、無断使用者を発見すれば、法人(理事長名で)が単独で訴訟を提起し、原告に大勢の名前が並ぶことがない機動性をもっている。
 最近のパブリシティ権判例は、「人格権」から生まれたことを強調するあまり、財産権性、譲渡性を認めることについて怯懦、臆病になっており、残念である。
 (本稿脱稿後、校正の段階で、小泉直樹「プロ野球選手の肖像等使用権限の所在をめぐる統一契約書の解釈」(野村豊弘・牧野利秋編「現代社会と著作権法―齊藤博先生御退職記念論集」(2008年6月30日・弘文堂)1頁)に接した。小泉教授は、控訴審において鑑定意見を提出され、その意見を基に本論文を書かれたこと、「控訴審(3(2)ウ)」について「疑問なしとしない」ことを述べられている。)

(おおいえしげお)


[参考文献]


○丹羽繁夫「プロ野球選手のパブリシティ権をめぐる諸問題―東京地判平18・8・1が積み残した課題」

NBL858号(2007年6月1日)40頁

○升本喜郎「プロ野球選手の肖像権に関する使用許諾権限の所在」

月刊コピライト2007年2月号30頁

○内藤篤・田代貞之「パブリシティ権概説第2版」

木鐸社、2005年

○阿部浩二「パブリシティの権利と不当利得」

(「新版注釈民法(18)債権(9)」)有斐閣、2001年




a.マーク・レスター事件(東京地裁昭和51年6月29日判決判時817号23頁)
「俳優等の側からみれば、俳優等は、自らかち得た名声の故に、自己の氏名や肖像を対価を得て第三者に専属的に利用させうる利益を有している。」
b.おニャン子クラブ事件(東京高裁平成3年9月26日判決判時1400号3頁)
「芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価値として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。」
c.晩翠事件(横浜地裁平成4年6月4日判決判タ788号207頁)
「パブリシティ権とは、歌手、タレント等の芸能人が、その氏名、肖像から生ずる顧客吸引力のもつ経済的利益ないし価値に対して有する排他的財産権であると解する。」
d.ブブカ・スペシャル7事件(東京高裁平成18年4月26日判決判タ1214号91頁)
「一般に、固有の名声、社会的評価、知名度等を獲得した著名な芸能人の氏名、芸名、肖像等(氏名、芸名を含め、以下「肖像等」という。)を商品に付した場合には、当該商品の販売促進に有益な効果、すなわち、顧客吸引力があり得ることは、一般によく知られているところであり、著名な芸能人には、その肖像等が有する顧客吸引力を経済的な利益ないし価値として把握し、これを独占的に享受することができる法律上の地位を有するものと解される。」

 パブリシティ権の譲渡については、東京高裁平成14年7月17日判決判時1809号39頁(「黒夢」事件)がある。結論として、パブリシティ権の財産権性、譲渡性を認めた判例である。この判決では、「肖像使用権」の譲渡と称しているが、内藤篤弁護士がいわれるようにパブリシティ権の再譲渡を論じている(内藤篤・判例評論537号196頁)。
 判決文を離れて、本事件を簡約すると、ロックバンド「黒夢」は、(A、B、原告X)からなっていた(のちB脱退)。黒夢は、訴外C社とマネージメントの専属契約を締結した。マネージメントの専属契約を締結することは、通常、肖像パブリシティ権、氏名パブリシティ権あるいは、筆跡、経歴等についての権利を譲渡することである。その後、C社は、D社にその地位を譲渡し、D社からE社へその地位が譲渡された。Yは、E社と(XとA)の肖像写真掲載の「黒夢」のライブツアーの写真集を出版した。YはXには無断で出版したため、Xがパブリシティ権または肖像権侵害として750万円を請求して訴えた。
 1審東京地裁平成14年2月22日判決判時1809号41頁は、Yにおいて、Eが原告の肖像使用権を専属的に有している、出版行為が適法と信じるについて相当の事由があるとして、原告請求を棄却した。東京高裁は、契約上の地位を譲り受けたD社は、Xの承諾なくして、肖像使用権を第三者に譲渡しうるとして、控訴を棄却した。
 前掲内藤論文とともに内藤篤・田代貞之「パブリシティ権概説第2版」310頁、322頁、325頁を参照。

 川井圭司「プロスポーツ選手の法的地位」(2003年・成文堂)419頁は、「肖像権あるいは著作権等もすべて球団に属する」とし、伊藤亮介弁護士は、「選手は撮影されることに同意し、また肖像権が球団に帰属することに同意している」とする(「自由と正義」1994年11月号26頁)。浦川道太郎「野球協約と統一契約者からみたプロ野球選手契約の法的問題」自由と正義1994年11月号19頁は、「その肖像権・著作権も球団に帰属する。」とする。


 東京高裁平成18年4月26日判決(平成16(ネ)4076号、判タ1214号91頁)(ブブカ・スペシャル7事件)。

 大家重夫「肖像権」(2007年・太田出版)173頁以下参照。
1.(社)日本プロゴルフ協会(PGA=The Professional Golfers’Association of Japan)
シニア規程抜粋
第23条(テレビ・ラジオ・写真・記録の権利)
PGAの競技に出場するすべての選手は、その出場する競技に関するテレビ・ラジオ・写真・記録ならびに、これらに類するすべての個人肖像権、著作権等をPGAに委譲するものとし、PGAの承認を得ずして他に譲渡または貸与してはならない。
また、主催者は、以下の目的のためにこれらを使用する場合は、PGAの承認を得るものとする。(以下、省略)

2.(社)日本俳優協会
著作隣接権等の処理に関する規約
第2条協会員は、本協会に対し、著作権法第89条に規定する著作隣接権等及び肖像権等の権利につき全部または一部を譲渡し、またはその権利の行使を委任することができる。
2本協会は、前項により譲り受けまたは委任を受けた権利の行使につき、本協会が適当と認める団体に対し、再委任することができる。
3本協会は、協会員以外の実演家から、第1項に定める権利を譲り受け、またはその権利の行使の委任を受けることができる。

3.(社)日本音楽事業者協会
専属芸術家統一契約書
第3条(独占的許諾)
1(省略)
2甲は、乙の氏名、写真、肖像、筆跡および経歴などについての財産上の権利を独占的に有するものとし、その権利の行使については、甲の判断に基づいて行います。
第4条(芸名に関する権利)
1乙が第7条の業務を行うに際して用いる芸名に関する一切の権利は甲に帰属します。
2乙が第7条の業務を行うに際して自己の氏名を用いる場合には、これを芸名とみなします。
3乙がこの契約の存続期間中に使用した自己の芸名を契約終了後に使用する場合には、乙は事前に書面による甲の承諾を得なければなりません。
4乙が前項の承諾を得ずに自己の芸名を使用した場合には、乙は甲に対し、無断使用によって甲の蒙るべき一切の損害について賠償しなければなりません。
5(省略)
第8条(権利の帰属等)
1この契約の存続期間中に前二条の業務の遂行により制作された著作物、商品其の他のものに関する著作権、商標権、意匠権、パブリシティ権、所有権その他一切の権利は、この契約または甲乙と第三者との契約に別段の定めのある場合を除き、すべて甲に帰属します。
2(省略)

4.プロサッカー選手
Jリーグ規約
第97条(選手の肖像等の使用)
(1)選手は、第88条の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という)が報道、放送されることおよび当該報道、放送に関する選手の肖像等につき何ら権利を有するものでない。
(2)選手は、Jクラブから指名を受けた場合、Jクラブ、協会およびJリーグの広告宣伝・広報・プロモーション活動(以下、広告宣伝等)に原則として無償で協力しなければならない。
(3)選手は、次の各号について事前にJクラブの書面による承諾を得なければならない。
 (1)テレビ・ラジオ番組への出演
 (2)イベントへの出演
 (3)新聞・雑誌取材への応諾
 (4)第三者の広告宣伝等への関与
(4)前項の出演または関与に際しての対価の分配は、Jクラブと選手が協議して定める。
第136条
(1)Jリーグは、Jクラブ所属の選手、監督、コーチ等(以下「選手等」という)の肖像、氏名、略歴等(以下「肖像等」という)を包括的に用いる場合に限り、これを無償で使用することができるものとする。ただし、特定の選手等の肖像等のみを使用する場合には、その都度、事前にJクラブと協議し、その承諾を得るものとする。
(2)Jリーグは、前項の権利を第三者に許諾することができる。

日本サッカー協会統一契約書
日本サッカー協会選手契約書[プロA契約書]
第8条(選手の肖像等の使用)
(1)クラブが本契約の義務履行に関する選手の肖像、映像、氏名等(以下「選手の肖像等」という)を報道・放送において使用することについて、選手は何らの権利を有しない。
(2)選手は、Jクラブから指名を受けた場合、Jクラブ、協会およびJリーグの広告宣伝・広報・プロモーション活動(以下広告宣伝等)に原則として無償で協力しなければならない。
(3)選手は、次の各号について事前にJクラブの書面による承諾を得なければならない。(1)テレビ・ラジオ番組への出演、(2)イベントへの出演、(3)新聞・雑誌取材への応諾、(4)第三者の広告宣伝等への関与
(4)前項の出演または関与に際しての対価の分配は、Jクラブと選手が協議して定める。

 芸名について、経済的利益を排他的に支配する権利としての財産的権利を肯定し、プロダクションが勝訴した加勢大周事件がある(東京地裁平成4年3月30日判決判タ781号282頁)。
 専属契約の更新を拒絶した被告人気タレントYが原告プロダクションXを離れ、新たに、被告プロダクションYと専属契約を締結した。原告プロダクションXは、1.専属契約が存続していることを前提に、専属契約に基づく不作為(被告プロダクションYと専属契約を締結し、芸名を使用して第三者に対し芸能に関する出演等の役務の提供をしてはならない)の請求をし、2.原告プロダクションXが被告タレントYについての芸名等の使用許諾権を有することの確認を求め、3.被告プロダクションYに対し、芸能についての専属契約締結をしてはならない等の不作為の給付の訴えを起こした。
 「芸能人の氏名・肖像等の有するこのような効果は、独立した経済的利益ないし価値を有するものであり、このような芸能人の氏名・肖像等は、当然に右経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利の1つに該当するものというべきである。」とし、「原告は、被告Kに対し、本件契約第1条、第2条に基づき、芸名『加勢大周』を使用して、第三者に対し芸能に関する出演等の役務の提供をすることの禁止及び原告が別紙目録の芸名等の使用許諾権を有することの確認を求めることができるというべきである。」と原告が勝訴、控訴されたがこの点は変わらなかった。