発明 Vol.102 2005-5
判例評釈
警備会社ステッカーの
偽造販売と商標権侵害
−セコム事件−
〔東京地判平成16.5.24平成16(ワ)6516号・最高裁ウェブサイト〕
長塚 真琴
〈事件の概要〉

 X(セコム(株))は,警備業等を営んでおり,第42類*1(警備等)を指定役務とする本件商標権1(第4137579号),および第16類*2(印刷物等)を指定商品とする本件商標権2(第4286949号)の商標権者である。Xは,図1に示すXステッカーを,防犯サービス等の契約者に貸与している。
 Y(個人)は2003年8月下旬からインターネットのヤフーオークションに,図2に示すYステッカーを出品した。認定事実によれば,Yは翌年2月11日までに総数796枚を合計75万7060円で販売した。製造・販売の経費が3万3135円かかっているとされ,利益は72万3925円と認定された。
 Xは,YがYステッカーを販売し,販売のために展示することは,本件商標権1および2の侵害となると主張した。そして,図3に示す標章(本件商標)*3を付したステッカーの販売およびそのための展示の差止請求と在庫の廃棄請求をなした。それに加え,財産的損害としてXの挙げた利益72万5905円*4を商標法38条2項に基づき請求し,このほか信用毀損による損害1000万円と,弁護士費用100万円も請求した。Xは,信用毀損による損害を主張するにあたり,Xステッカーは「Xが多大の費用と時間をかけて開発し,広告宣伝および営業活動によって築き上げた防犯サービス等の信用力を表象するもの」であると主張している。
 Yは,自らの行為が商標権侵害にあたるという認識がなかった。また,以下の諸点についてXに質問したが回答がなかったため,違法性がないと理解して販売を続けたと反論した。諸点を要約すれば,1)防犯サービスの競業をせず,Xが契約者に無料配布するステッカーのパロディ品をそれと明記して紹介することがなぜ違法か,2)ロゴタイプやコメント,デザイン,品質が異なるのになぜ商標権侵害か,である。





〈判 旨〉

 請求一部認容。差止請求・廃棄請求をXの主張どおり認容した。さらに,財産的損害として72万3925円,信用毀損による損害300万円,弁護士費用50万円,計422万3925円の請求を認容した。
1 商標権侵害の有無
 「Yステッカーは,本件商標権2の指定商品である印刷物又は文房具類に該当すること,Yステッカーには,別紙Yステッカー目録記載のとおり,表面の下段約3分の1程度の幅で大きく本件商標と実質的に同一の標章が付されていること,以上の事実が認められる。したがって,Yステッカーを販売し,又は販売のために展示するYの行為は,Xの有する本件商標権2を侵害する行為である。
(なお,Xは,Yの上記行為が,本件商標権1を侵害する行為であるとも主張する。本件商標権1に基づく請求と本件商標権2に基づく請求とは,選択的な請求と解されるので,本件商標権1の侵害の有無については判断しない。)」
 「Yの主張する事情はいずれも商標権の侵害の成否を左右する事情にはなり得ず,Yの主張は,主張自体失当である。」
2 Xの損害額
 「Yの本件商標権2の侵害行為によりXが被った損害額について判断する。
(1) 財産的損害
 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,Yは,平成15年8月22日から平成16年2月11日までの間,『piano_763』及び『h841dtm』のIDでインターネットのヤフーオークションにYステッカーを出品し,総数796枚を合計75万7060円で販売したことが認められる。
 また,弁論の全趣旨によれば,Yは,Yステッカーを製造販売するために,前記第2の2(1)イ(ア)《2》(販売経費)記載のとおり,合計3万3135円の費用を支出したことを認めることができる。(中略)
 したがって,YはYステッカーの製造販売により,72万3925円の利益を得たものと認められるから,同額が本件商標権2の侵害によりXが被った損害額と推定される(商標法38条2項)。
 75万7060円−3万3135円=72万3925円
(2) 信用毀損による損害
 Xは,長年にわたり,警備業法に基づいた防犯サービスを営んでいる。Xは,顧客との間で防犯サービス,火災監視サービス等の提供契約を締結した場合に,契約者であることを表示し,防犯上の抑止力とすることを目的として,契約者に対しXステッカーを貸与している。Xステッカーは,防犯サービス等の対象となった建物等に貼付され,これによりXが同サービスを行っている建物等であることが,部外者から一見して分かるものである。このように,Xステッカーは,広告宣伝及び営業活動を行うことによって築き上げた防犯サービス等の信用力を表象するものであり,同ステッカーの貼付された建物等はXの提供する防犯サービス等の契約建物等であると認識されている。」
 「《1》Yの販売に係るYステッカーは,Xステッカーと同一又は極めて酷似したものであって,Yステッカーの外観からその出所を判別することは困難であること,《2》Yステッカーの販売数量は,合計約800枚であって,極めて多数に及ぶこと,《3》Yは,Xから警告状を受け取って,詫び状を送付し,販売の中止を約束しながら,IDを変更して,販売を継続していること,警告書を受け取った後の販売数量が,警告書を受ける前より多数に及ぶこと,《4》Xステッカーは,Xが多大の費用と時間をかけて,営業活動及び宣伝活動をすることによって形成したXの防犯サービス等の信用力を表象するものと評価でき,Xステッカーの掲示をもって,Xの提供する防犯サービスの契約者であると,一般に認識されていること等の事実に照らすならば,YによるYステッカーの販売行為は,Xが形成してきた防犯サービスに対する評価及び信用を著しく低下させる行為であり,その販売態様も悪質であるといえる。そうすると,Yの販売行為によりXが被った信用毀損による損害は300万円と認めるのが相当である。」

〈評 釈〉

1 本判決の意義
 本件は,警備会社のステッカーの有する市場価値と,ステッカーの取扱いに関する会社の方針との相克を背景とした,これまでにない事案を呈している。
 本件において裁判所は,ステッカーの「貸与」が無償かどうかには言及していない。しかし,Xの公式サイトによれば,Xはステッカーを役務と独立して販売していない。それどころか,契約者に対してさえ,ステッカーは有体物としても知的財産としてもXが所有することを強調し,その譲渡を厳しく制限し,契約終了後には返還することを義務付けている*5
 すなわち,Xステッカーには,Xにより認められた表の市場がない。しかしながら,市場における交換価値はあるため,Xの意図しない裏の市場で「商品」として流通している。そこでは,偽造品だけでなく,Xの契約者が出品した真正品も売られている。このような裏の市場において,「商品」に付された商標は,一体何を識別するのであろうか。
 本件は本人訴訟であり,判決文は極めて簡素である。しかし,本判決は,商品商標と役務商標が表示する出所とは何かについて,これまでの裁判例とは必ずしも一致しない判断を示し,考察の素材を提供している。また,打ち消し表示と侵害成立についても,間接的にではあるが判断を示した例であるといえる。以下,順を追って考察する。
2 商品商標と役務商標が示す出所
(一)本件商標権2(商品商標)について
 判旨は,侵害されたのは本件商標権2(印刷物等に関する商品商標権)であるとしながら,損害賠償請求を認める際に38条2項を適用し,さらに,「Xが形成してきた防犯サービスに対する評価及び信用」の毀損までも認めている。
 印刷物は,有体物として取引の対象となるため,それを指定商品とした商標登録が可能である。しかしそれは一方で,様々な情報の媒体であり,その交換価値は,必ずしも有体物としての価値とは限らない。従って,印刷物を指定商品とした商標権の侵害事件では,被告の標章が何を識別しているかが問題となることが多い。
 本件のYは,防犯サービス等の競業行為をしていない。その意味で,本件は,役務商標が登録できなかった時代に印刷物を指定商品として商標登録を受け,競業者を商標権侵害に問うた裁判例(《1》東京地判昭和36.3.2下級民集12−3−410〔趣味の会〕,《2》横浜地川崎支判昭和63.4.28無体例集20−1−223・判夕702−246〔木馬企画〕)とは,事案が異なっている。
 前掲《1》〔趣味の会〕は,会員組織による全国銘菓,名物,工芸品,民芸品の頒布販売業者間の紛争である。ここでは印刷物に関する「趣味の会」という商標権の侵害が問題とされた。そして,被告が会員に配付している月刊パンフレットは,会員に対するサービスの意味を持つ宣伝文書であり,被告の商取引の目的物とはいい難く,また刊行物としての交換価値も認め得ず,結局,商品ではないとされた。
 さらに,被告が広く一般にチラシを配布する行為は,被告の物品販売行為の目的物である銘菓,名物,工芸品,民芸品に関する広告行為であって,原告主張の商標権の指定商品である印刷物に関するものではないから,「商品に関する広告」(商標法2条3項3号)に該当しないとされた。
 前掲《2》〔木馬企画〕は,劇団が分裂して互いに競業関係に立つに至ったことから生じた事件である。ここでは,ぬいぐるみ人形劇というサービスは商標法にいう商品には該当せず,その宣伝・広告のためのポスターやちらし,その案内・解説のためのパンフレットやプログラムは,いずれもそれ自体が独自に商取引の対象として流通性を有しないから,商標法上にいう商品とも,商標法2条3項3号にいう商品に関する広告・取引書類ともいうことはできないとされた。また,観劇入場券については,サービスの給付を目的とする債権を表象しているという意味で財産的価値を有し,かつ商取引の対象となる流通性を有する面の存在することは否定できないけれども,本件で問題とされる劇場入場券の経済的価値は印刷物としてのそれではなく,サービスの提供を受けるものとしてのものであるから,劇場入場券に使用される標章は劇場入場券それ自体ではなく,そのサービスを識別する機能を果たしているものとみるのが相当であり,被告が販売する劇場入場券それ自体は商標法上の商品とはいえないと解するのが相当であるとされた。
 本件におけるXステッカーも,その本質は役務商標の表示媒体である。それは,商標法2条3項3号の「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」にあたる。しかしながら本件の場合,前掲の2つの事件とは異なり,有体物としてのステッカーの出所を識別する商品商標の機能は,完全には失われていないと考えられる。
 なぜなら,Xステッカーには市場における交換価値があり,Xの厳重な禁止にもかかわらず,現に役務とは独立して流通しているからである。そして,インターネットオークションには,Xとの契約者が出品した真正品のステッカーも出品されており,Yステッカーのような偽造品との間には,Yが自認するような品質の差が存在する。本件商標権2にかかる商標は,Xによって公認されない市場でのステッカーの取引という局面において,X純正のステッカーという出所を識別しているのである。
 この限りで,Yの行為を本件商標権2の侵害とした判決は不当とまではいえない。しかし,認定された損害賠償額は,本件商標権2というよりは,むしろ本件商標権1の侵害に基づく額であり,ここに,本判決の最大の問題点がある。この点については後述する。
(二)本件商標権1(役務商標)について
 判決は,本件商標権2による請求を認め,本件商標権1による請求については判断しなかった。文理上,2条3項3号の「役務の提供に当たり」の主語は明確ではないが,Yの行為は役務商標権の侵害にも該当すると考えられる。なぜなら,2条3項3号は,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物」に標章を付する行為を,標章を付したものを用いて役務を提供する行為(同条項4号)とは独立して,標章の「使用」のうちに数えているからである。そして,本件ステッカーは,2条3項3号が明示するようにXの契約者に「貸し渡」され,役務の提供を受けるにあたって用いられている。
 実質的に考えても,役務の商標権者であるX以外の者が,いくら自ら役務を提供しないからといって,Xの顧客が役務の提供を受ける際に使う物に,登録商標を付す自由を認める必要はない。
 従って,Yが防犯サービスの競業行為をしているかどうかにかかわらず,Yの行為は本件商標権1の侵害にあたると思われる。
 後述の損害賠償との関係では,判決はむしろ,本件商標権1の侵害を認定すべきだったのではないかと考えられる。さらにいえば,判旨は本件商標権2と本件商標権1を同じもののように考え,本件商標権2の侵害を基礎としつつ,本件商標権1の侵害に関する損害額を計算しているのではないか。3(二)でこの点について踏み込む前に,Yが正しく反論すれば裁判所によって判断されたと思われる,打ち消し表示に関する論点に触れておこう。
(三)打ち消し表示
 Yは,インターネットオークションで「パロディ品を純正品でないことを明記して販売」したことを,直接反論として主張せず,「違法性がないものと理解」した理由の1つとして述べている。従って,この反論に対する判決の応え方は,正当なものである。
 ここでは,仮にYがこの点を,直接反論として主張したらどうなったかについて考える。
 Yは,インターネットオークションでの販売にあたって,YステッカーがXの純正品でないことを明示して販売したにすぎず,Yステッカー自体には打ち消し表示はなされていない。このような打ち消し表示の態様は,偽ブランド品の店頭販売において,商品それ自体ではなく販売状況から偽物であることがわかる場合*6と,同様に考えてよいであろう。このような場合,Yステッカーを当該オークションで購入する者が出所を混同することはないかもしれないが,その者がこれを転売したら,相手方において出所の混同がありうる。従って,このような販売態様があったからといって,商標権侵害の結論を左右するものではない。
3 損害額について
(一)商標法38条2項の適用
 XはXステッカーを一切販売しておらず,その販売から利益を得ていない。このような場合に,判決のいうように,本件商標権2の侵害に対して,商標法38条2項は適用されるであろうか。
 この点,これまでの裁判例では,商標権者が商標を使用していない場合には,同条項の推定は働かないとされている*7。しかし本件の場合は,Xの商品商標は,2(一)でみたように,いちおうステッカーについて「使用」されているといえる。ただし,その自他商品識別機能は,Xの管理外でXステッカーが販売される場合にその出所を表示するという形でのみ働く。仮に裏市場で純正品のほうが偽造品より売れたとしても,その利益はXには還元されない。
 また,商標権者が商標を使用しているのが,侵害者の商品と市場において競合しない商品である場合に,同条項の適用を否定する裁判例がある(《3》大阪地判昭和54.11.28判工所2851−391〔ETIQUETTE FRIEND〕)。一方,本件では,「商品」どうしはいちおう競合している。
 本件の事案は,この点でも目新しいものである。しかし,38条2項は商標権者の売上減退による逸失利益の補填のための規定であるという前提に立つ限り,Xにステッカーの売上がない以上,同条項の適用はないということになろう。本件商標権2の侵害を問題にする以上,Xの財産的損害は,同条3項により算定するよりほかないであろう。
 なお,仮に本件商標権1(役務商標)の侵害が認定された場合でも,Yが競業をしてXから顧客を奪っていない以上,Yの挙げた利益がXの逸失利益であるという推定は,本件商標権2の場合と同様に,成り立たないと思われる。
(二)信用毀損による損害額
 本件において重視すべきは,本件商標に蓄積された信用が毀損されたことによる無形の損害である。判旨が無形損害を認定したこと自体は正しい。しかし,この無形損害は,本件商標権2の侵害から導かれるだろうか。
 この点について参考になるのが,《4》東京高判平成2.3.27無体集22−1−233,判時1360−148〔高嶋象山〕である。これは,著作者名を商標登録したことが,廃止された19条2項但書2号(更新時不使用取消)との関係で問題になった事件ではあるが,印刷物の一種である書籍に付される商標が識別する出所とは何かを判断している。すなわち,「商標法上商標が付される商品とは,流通の対象となる有体物そのものを指し,商品としての『書籍』についていえば,これを出版し販売することを業とする者がその出所の主体であり,かかる業務主体は,その使用に係る商標を介して,例えば,製本の堅牢さ,印刷の美しさ・正確さ,装丁の美しさ等につき自己の出所に係る商品である書籍の品質の良さを需要者に訴え,記憶にとどめさせることにより,自他商品の識別機能の発揮を期待するのである。」
 「原告の右の主張は,商品としての『書籍』の意義について有体物としてだけでなく,その記述内容もこれに含ませたうえ,『高嶋象山』の表示を介して需要者が認識する精神的な労作である著作物の同一性ないしはその信頼性についての識別機能をいうものであり,有体物である商品『書籍』を出版販売する業務主体の識別機能をいう商標本来の領域とは異なる領域に属することを論ずるものである。」
 これと同様に,本件商標権2にかかる商標は,「商品としてのステッカー」の出所を識別するのみである。Xステッカーという有体物に化体した信用とは,「偽造品ではないX純正のステッカー」というものにすぎない。判旨はYの行為により,「Xが形成してきた防犯サービスに対する評価及び信用」が毀損されたというが,これは,ステッカーそのものではなくその記述内容が有する信用の毀損をいう点で,《4》〔高嶋象山〕における原告の主張に通じるものがある。「Xが形成してきた防犯サービスに対する評価及び信用」は,役務に関する本件商標権1に化体しているのである。
 すでに述べたとおり,ステッカーの市場からは,Xに利益が還流していない。そうである以上,ステッカーの品質に関する信用が偽造により毀損されたことについて,300万円もの損害が認められるべきではないと思われる。信用毀損による損害額として,意味のある額を認定するためには,本件商標権1の侵害を選択すべきだったと思われる。
 蛇足ながら,判旨が本件商標権1の侵害を基礎に信用毀損にかかる損害を算定したと仮定しも,300万円の損害額には疑問が残る。
 従来の裁判例のうち損害額が100万円を超えたものをみると,《5》大阪地判平成2.8.28判工所(2期版)8155−17〔ルイ・ヴィトン1〕では,5年にわたり4万5000個の偽造品を製造販売し,かつて刑事事件でも被告人となっている者に対し,財産的損害(=被告純利益)3357万5000円,信用毀損による損害400万円(請求額1000万円),弁護士費用150万円(請求額300万円)が認められている。
 また,《6》大阪地判平成5.8.30判工所(2期版)8155−52〔ルイ・ヴィトン2〕では,1年半にわたり偽造品を販売した者が,財産的損害(=被告純利益の内金)800万円(請求額800万円),信用毀損による損害200万円(請求額200万円),弁護士費用100万円(請求額120万円)の請求を受けている。
 《7》大阪地判平成7.3.24判工所(2期版)8155−59−3〔ルイ・ヴィトン5〕では,偽造品を製造販売した者が,擬制自白により,財産的損害(=被告純利益)127万円,信用毀損による損害150万円(請求額200万円),弁護士費用30万円(請求額80万円)を言い渡されている。
 最後に,《8》東京地判平成7.4.28判工所(2期版)8155−64〔ヘネシー〕でも,偽造品を輸入販売した者が,財産的損害(=使用料相当額)166万2480円,信用毀損による損害200万円(請求額の一部),弁護士費用200万円(請求額757万7022円)の請求を受けている。
 本件では,侵害期間は6カ月足らずであり,財産的損害の額も72万円強にすぎない。本件の事案がこれまでの裁判例と同様の「悪質性」を有するとは思われない。

〈結 語〉

 以上のように,判旨は商品商標と役務商標の識別する出所を混同している。本判決は本人訴訟であることの影響を強く受けており,その射程は狭いと考えられる。


(ながつか まこと:獨協大学法学部助教授)


(注)

国際分類第6版。
国際分類第7版。
本件商標権1でも2でも,図3と同一の標章が登録されている。
Xは,Yステッカーの売上枚数を,裁判所が認定したよりも100枚多く主張した。主張した損害額も,それに対応して多くなっている。
http://www.secom.co.jp/news/20010906.html(2005年4月5日URL最終確認)。これは,勝手にステッカーを貼った家屋が盗難等に見舞われた場面を目撃され,「シールがあるのにセコムは来なかった」という噂が立つことを防ぐためと考えられる。
田村善之『商標法概説[第2版]』(有斐閣,2000年)156頁。
田村前掲書340頁。