原告Xは西瓜を並べた写真(X写真)を1986年7月に撮影した。X写真は同月訴外発行の「きょうの料理」に掲載され,さらに1992年11月発行の「黄建勲の旬菜果」に掲載された。
被告Y1は西瓜を並べた写真(Y1写真)を1993年8月に撮影した。被告Y2はY1写真をカタログ「シルエットin北海道」(Y2カタログ)に掲載し発行し頒布した。Xは,Y1写真はX写真の翻案権及び同一性保持権を侵害しているとしてY1及びY2に対して慰謝料支払いならびに謝罪広告の掲載を,Y2に対しY2カタログの発行等の差止め,回収,廃棄を請求した。
東京地裁はX写真の著作物性を認めるものの「写真技術を応用して制作した作品については,被写体の選択,組合せ及び配置等が共通する時には,写真の性質上,同一ないし類似する印象を与える作品が生ずることになる。しかし,写真に創作性が付与されるゆえんは,被写体の独自性によってではなく,撮影や現像等における独自の工夫によって創作的な表現が生じ得ることによるものであるから,いずれもが写真の著作物である二つの作品が,類似するかどうかを検討するに当たっては,特段の事情のない限り,被写体の選択,組合せ及び配置が共通するか否かではなく,撮影時刻,露光,陰影の付け方,レンズの選択,シャッター速度の設定,現像の手法等において工夫を凝らしたことによる創造的な表現部分,すなわち本質的特徴部分が共通するか否かを考慮して,判断する必要があるというべきである。」と説示し,Y1写真との共通点は被写体の類似によるものであり創作的表現の類似は認められないとしXの訴えを棄却した(東京地裁1999年12月15日判決判,例時報1699号145頁)。X控訴。