発明 Vol.96 1999-12
判例評釈
「筑後の国寒梅」又は「筑後の寒梅」という標章
が,清酒を指定商品とする「寒梅」という商標と類
似しないとされた事例
[東京地裁平成10年7月24日判決,平成7年(ワ)20095号商標権侵害差止等請求事件,
一部認容,一部棄却(控訴),判例時報1661号128頁;判例タイムズ989号266頁]
久々湊 伸一
<事実の概要>

 原告(X)は,文字「寒梅」を含む3つの商標(次頁のX商標目録一ないし三)の商標権者で,指定商品はいずれも「清酒」である。
 被告(Y)は,業として平成2年10月から次頁のY標章目録1ないし3(すなわち筑後の国という毛筆の小さな字の下又は左側に寒梅という大きな文字を配したもの)及び4と5の1又は複数を付した清酒を販売し,平成7年2月10日まで継続し,Xが訴訟を提起した前後の同年3月ころからは,末尾のY標章目録6ないし10記載の標章(毛筆又は活字で同じ大きさの)筑後の寒梅を縦又は横1列あるいは2列に配したもの)の1または複数を付した清酒を販売した。
 XYの複数の標識がそれぞれ対比されているので代表して3つの場合を取り上げれば,まずXは「X商標三とY標章1の要部は,いずれも毛筆により書かれた『寒梅』という文字であり,これらの外観は類似しており,観念及び称呼を同じくするから,X商標三とY標章1は同一であるか類似する。」と主張した。又「X商標三とY標章4を対比すると,X商標三とY標章4の要部は,観念及び称呼を同じくするから,X商標三とY標章4は同一であるか類似する。」と主張した。更に「X商標三とY標章5を対比すると,X商標三とY商標5の要部は,観念及び称呼を同じくするから,X商標三とY標章5は同一であるか類似する。」と主張した。
 これに対しYは,両標章は外観が全く異なっていると主張する共に,「酒類にあっては,地域地区の表示は,商品を区別するための重要な部分であるので,『寒梅』に地域地区の表示である「筑後」を付せば,その標章は,もはやX商標1ないし3と類似することはない。寒梅に地域地区の表示を付した標章は,『越乃寒梅』を始め多くのものが酒類に用いられている。」とした。
 損害賠償の関係では,平成2年10月から7年2月10日までのYのY標章1ないし3による清酒の販売額は7憶3940万2000円であるとのXの主張をYは認めている。X主張の損害額は3.8%に当たる2809万7276円,予備的に使用許諾料としての4%に当たる2957万6080円を主張した。


<判旨>
 (1)「寒梅」の文字が「筑後の国」又は「筑後の」の文字より大きい場合の使用(代表的にX商標三とY標章1について)
 「X商標三は,『寒梅』という文字を毛筆により縦書きしたのであり,寒梅すなわち寒中に咲く梅という観念を生じ,『かんばい』という称呼を生じるものと認められる。
 (・・・・・・)Y標章1は,『筑後の国』という文字を毛筆による行書体により縦書きし,その下に続けて,『筑後の国』の各文字の4倍ほどの大きさの文字により,『寒梅』という文字と,毛筆による行書体により縦書きしたものである。Y標章1のうち,『寒梅』という部分は,文字の大きさからして極めて目立つ部分であり,Y標章1に接した取引需要者は,『筑後の国』という部分は捨象して,『寒梅』という部分によって商品を識別することが多いものと認められるから,『寒梅』という部分がY標章1の要部であると解される。そうすると,Y標章1は,その要部により,寒梅すなわち寒中に咲く梅という観念を生じ,『かんばい』という称呼を生じるものと認められる。」
 (2)「寒梅」の文字が「筑後の国」又は「筑後の」の文字より大きいが特別の条件のある場合の使用について(X商標三とY標章4)
 「Y標章4は印影をかたどったものであり,ほぼ正方形の枠の中の右側にてん書の小てん風の書体により,『筑後の国』という文字を一行に縦書きし,その左に,『筑後の国』の各文字の二倍ほどの大きさの小てん風の文字により『寒梅』と縦書きしたものである。
 Xは,Y標章4のうち,『寒梅』という部分は,文字の大きさからしても極めて目立つ部分であり,また,『筑後の国』という部分は,産地,販売地名を表示し,自他商品の識別機能を有しない部分であるから,Y標章4の要部は,『寒梅』という部分であると主張する。
 しかし,Y標章4は,全体がほぼ正方形の枠に囲まれていること,『筑後の国』という文字と『寒梅』という文字は,文字の大きさは違うものの,いずれも,てん書の小てん風の同一書体により記載されていることから,Y標章4は,一つの印影をかたどったものであることは容易に認識することができ,全体が一つのまとまりのある標章として認識されるものと認められる。
 また,《証拠略》によると,日本酒の銘柄名には,地名が含まれているものが多くあり,その場合,それを販売している蔵元の多くは,その地に所在しているものと認められる。これは,日本酒については,一般に産地により味や品質が異なるものと認識されているため,その名称に地名を付して産地名を表わすことが行われているものと認められる。そうすると,日本酒の名称に地名が含まれている場合には,取引者需要者は,その地名は産地名を表わしていると認識し,その地名に着目するものと考えるから,その地名の部分も自他商品の識別機能を果たしているものと認められ,『筑後の国』という部分も自他商品の識別機能を有するものと認められる。この点について,Xは,商標に含まれる地名部分が真実の産地を表示していないこともあると主張する。確かに,《証拠略》によると,北海道の会社が指定商品を酒類とする『灘千歳鶴』という商標を登録している例や新潟県所在の蔵元が『加賀の井』という銘柄の日本酒を販売している例などがあり,また,Yも韓国産の日本酒を『筑後鷹』という名称で販売していることが認められる。しかし,右認定のとおり,日本酒の銘柄名に地名が含まれている場合,それを販売しいる蔵元の多くは,その地に所在しているのであって,右のような一部の例があるからといって,そのことは,日本酒の名称に地名が含まれている場合には取引者需要者はその地名に着目するとの右認定を覆すに足りるものではない。
 なお,《証拠略》によると,Xは,X商標三を付した『寒梅』という銘柄名の清酒を販売していること,この『寒梅』は,もともと埼玉県を中心に販売されていた,いわゆる『地酒』であったこと,日本各地の酒を紹介する本が発行されているが,右『寒梅」は,10冊以上のこのような本に取り上げられて紹介されたこと,週刊新潮,週刊文春,週刊現代等の週刊誌に『全国の蔵元が育む,美酒36選』という2ページの広告が平成元年7月以降掲載されたが,右『寒梅』は,この広告に平成元年7月から平成8年6月までの間に延べ312回にわたって36銘柄の一つとして掲載されたこと,このように本に紹介されたり広告を掲載した結果,右『寒梅』は全国的に知られるようになってきており,埼玉県や同県の近県以外でも販売されるようになってきていること,以上の各事実が認められる。以上のとおり,Xの販売しているX商標三を付した『寒梅』は全国的に知られるようになってきているものと認められるが,右『寒梅』が日本全国において広く知られているとまでは認められず,他にX商標一ないし三が全国的に広く知られていたものというべき事情を認めるに足りる証拠はない。
 また,《証拠略》によると,寒梅をその銘柄に含む清酒として最も有名なものは,新潟の石本酒造株式会社が販売している『越之寒梅』であると認められるところ,《証拠略》によると,漫画中のせりふにおいて,右『越之寒梅』を『寒梅』と呼んでいる例があることが認められる。しかし,それのみで,右『越之寒梅』が一般的に『寒梅』と呼ばれていることを認めることはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。《証拠略》によると,Y標章6が付されたYの製品が『寒梅パック』の名称で売られ,Y標章7及び8が付されたYの製品が『寒梅』の名称で売られていた例があることが認められる。しかし,それのみで,Yの製品が一般的に『寒梅』と呼ばれていることを認めることはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。そして,他に,寒梅をその銘柄名に含む清酒が日常的に『寒梅』の名称で取引されている事実を認めるに足りる証拠はない。
 以上述べたところを総合すると,Y標章4の『寒梅』の部分のみが要部であると解することはできず,Y標章4の全体が自他商品の識別機能を有するものというべきである。
 (・・・・・・)そうすると,Y標章4は,外観としては,ほぼ正方形の枠に囲まれている部分全体を観察すべきである。また,Y標章4は,『ちくごのかんばい』という称呼を生じ,筑後の国の寒梅すなわち筑後の国において寒中に咲く梅という観念を生じるものと認められる。」
 「X商標三とY標章4を対比すると,両者は,外観,観念,称呼が異なるから,X商標一とY標章4は,類似するとは認められない。」
 (3)「寒梅」の文字が「筑後の国」又は「筑後の」と同じ大きさである場合の使用(X商標三とY標章5)
 「Y標章5は,『筑後の国寒梅』という文字を等しい大きさの明朝体の活字により,『筑後の国』と『寒梅』との間にほぼ一文字分の間隔を空けて一行に横書きしたものである。
 Xは,Y標章5のうち,『筑後の国』という部分は,自他商品の識別機能を有しない部分であり,『寒梅』という部分が要部であると主張する。しかし,Y標章5は,『筑後の国』と『寒梅』との間にほぼ一文字分の間隔が空けられているものの,等しい大きさの明朝体の活字により,一行に横書きされており,全体が一つのまとまりのある標章として認識されるものと認められ,また,(上記(2))で述べた理由により,『筑後の国』という部分は自他商品の識別機能を有し,『寒梅』の部分のみが要部であると解することはできないから,Y標章5の全体が自他商品の識別機能を有するものというべきである。
 そうすると,Y標章5は外観としては,その全体を観察すべきである。また,Y標章5は,『ちくごのくにかんばい』という称呼を生じ,筑後の国の寒梅すなわち筑後の国において寒中に咲く梅という観念を生じるものと認められる。」
 「X商標三とY標章5を対比すると,両者は外観,観念,称呼が異なるから,類似するとは認められない。」
 (4)損害賠償について
 「1.Yが平成2年10月から平成7年2月10日までの間に,Y標章1ないし3の1又は複数を付した清酒を販売し,その販売額が7億3940万2000円であることは当事者間に争いがないところ,このYの行為はXの商標権を侵害する行為である。
2.(一)(・・・・・・)Xは,X商標三を付した清酒を販売しているから,Yの右商標権侵害行為によって損害を被ったものと認められ,その損害額は,Yが右行為によって得た利益の額から推定することができるが,Yの右行為と相当因果関係のある利益の額に限られる。
 (二)そこで,Yの右行為と相当因果関係のある利益の額について判断する。
 (i)<証拠略>によると,清酒製造業における平均営業利益率は,3.8パーセントであることが認められるところ,Yの利益率がそれを下回ることについての主張,立証は全くないから,Yは,Y標章1ないし3を付した清酒を販売したことにより,少なくとも販売額の3.8パーセントに当たる利益を得たものと認められる。したがって,Yが,平成2年10月から平成7年2月10日までの間にY標章1ないし3を付した清酒を販売したことによって得た利益の額は,2809万7276円であると認められる。
 (ii)<証拠略>によると,Yは,Y標章1を清酒の一升瓶の上部のラベルにY標章2を付したり,清酒の紙パックの側面三個所にY標章2を付したりしていたものと認められ,このような使用態様からすると,Yの製品においては,Y標章1ないし3はよく目立つ位置に付けられており,これらの製品の売上げに寄与したものと認められる。しかし,<証拠略>によると,Yの売上高は,平成2年度が2億7578万6000円,平成3年度が3億9922万5000円,平成4年度が7億6108万6000円,平成5年度が11億6520万6000円,平成6年度が20億8159万円,平成7年度が30億6876万8000円であって,平成2年から7年にかけて急激に売上げを伸ばしており,Yの出荷量は,平成7年には,全国30位になったことが認められるのであるから,このようなYの販売力も,Y標章1ないし3を付した清酒の販売に寄与したものと認められ,(前記(2))の認定のX商標三を付したX製品の周知度をも総合すると,Yの商標権侵害行為と相当因果関係のある利益の額は,右1の販売額の2パーセントに当たる1478万8040円と認めることが相当である。
3.X商標1ないし3の使用許諾料相当額は,右2の利益の額等既に認定した諸事情を考慮すると,販売額の2パーセントを上回ることはないものと認められる。」

<評釈>
 1.本件は,引用商標とそれと地名の結合商標との類否判断に関する事件である。Xの引用商標が3種類,Yの標章が10種類存在し,判決はこれらの組み合わせについて丹念に比較して判断しているが,X商標三の「寒梅」に対しY標章の1,4及び5を代表的なものとして考察すれば十分であると考える。それぞれの判断を判旨(1)ないし(3)に分けて示した。判旨(1)ではY標章1が「筑後の国」の文字に対して「寒梅」の文字が極端に大きいので,「寒梅」を要部とすることができるから類似する,したがって侵害が成立することを認めた。妥当である。判旨(2)(3)は,侵害が成立しない,すなわち類似しないとの判断を示した。後者は文字の大きさが同一であり,前者は大きさはやや異なるが特殊な書体でしかも四角い枠の中に収まっているので,「全体が一つのまとまりのある標章として認識される」から「寒梅」の部分を要部として取り出すことはできないとする。
 2.その際結合された地名は,通常商標法3条1項3号にいう商品の産地,販売地とされて識別力のないものと観念され,したがって引用商標との類似性が高いとされてきた。「明治屋」に対して「池袋明治屋」の標章においては,地名を表示する「池袋」は被告の営業場所の所在地であり,「明治屋」に比して注意をひくことが少なく簡易迅速を尊ぶ日常の取引においては,「池袋」の部分は省略され,単に「明治屋」の観念を生ずるとされた(東京地裁昭和36年11月15日判決,判例時報289号34頁;同旨東京高裁昭和27年5月30日判決,行集3巻4号784頁「牛込西勘」と「本家西勘」;東京高裁昭和40年2月11日判決,判例タイムズ174号199頁「東京阿武隈」と「阿武隈川」;東京地裁昭和57年6月16日判決,無体集13巻1号71頁「東京山形屋海苔店」と「山形屋海苔店」)。「明治屋」,「山形屋」,「西勘」というのは著名な商号ないし企業名であり,その支店その他の営業所と観念するという意味で「地名」の識別性が弱いことは明白である。
 「雲龍」に対する「白山雲竜」の「白山」は,加賀の白山として産地または販売地を表していると解することもできるが,一般的に白い山と観念して「雲龍」と結合して単なる「雲龍」とはやや別異の観念を生ずるとも考えられるが判決は前者の解釈を取っている(東京高裁平成3年11月18日判決,判例時報1410号107頁,判例評釈関根秀太,判例時報1424号177頁)。「ワイキキパール」(化粧品,香料類)において,「ワイキキ」は産地,販売地の表示であり識別力はないが,「ワイキキパール」は商標全体が不可分なものと認めて「パール」とは類似しないものとした場合がある(最高裁昭和55年8月26日判決,判例時報978号52頁)。「白山」と「雲竜」あるいは「ワイキキ」と「パール」は結合した場合,商標全体が不可分なものと認められるように思うが,前者は反対の判断が示されている。「雲竜」自体に識別性があり,「白山」が地名であるとしても,企業名に結合した場合とは識別力が異なろう。判旨には示されていないが裁判所の確信の中に使用度に対する判断が混入しているのではないだろうか。使用度は常に判断すべきであり,そして判決に明示されるべきものと考える。
 これに対して本件(判旨(2),(3)の場合)においては,「寒梅」に対する「筑後の国寒梅」の「筑後の国」ないしは「筑後の寒梅」の「筑後の」は自他商品の識別機能を有すると判断された。その理由は,商品「日本酒」においては地名が名称に含まれている場合には,取引者需要者は,その地名は産地名を表していると認識し,その地名に着目すると考えられるとする。判旨にあるとおり,「日本酒の銘柄名には,地名が含まれているものが多くあり,その場合,それを販売している蔵元の多くは,その地に所在しているものと認められる。これは日本酒については,一般に産地により味や品質が異なるものと認識されているため」である。農産物,酪農製品に限らず,地域において長年蓄積された生産技術に関連する商品に対する生産地を示す結合商標を構成する地名の特殊な意義を示した点で重要な判断である。これは原産地表示(又は地理的出所表示)に対する判断としても妥当するものと思われる。
 3.地名の性質を本件の主たる理由とし,「越乃寒梅」の存在を補強的理由にしているが,「寒梅」と「越乃」の結合商標が存在したということを決定的な理由とする考え方もあろう。そして「寒梅」の権利は,「越乃寒梅」その他の存在により,「寒梅」それ自体に減縮し,「寒梅」と他の文字の結合商標には及ばないという一般原則が適用になる場合に該当すると考えられないだろうか。「越乃寒梅」の商標の形成の時点で防衛する必要があったのではなかろうか。
 4.結合商標の地名が引用商標と共通な場合もある。「SPARスパー」(29類,茶,コーヒー,ココア等)に対する「SPAと図形」(29類,鉱泉水,炭酸水等)においては,ベルギーの鉱泉で有名なスパ市を原産地とするミネラルウォーターの原産地法人による出願について,外観,観念又は称呼のうちの1つにおいてのみ類似することを理由に類似と認定して登録を認めないのは誤りであるとし,その根拠として,「実際の取引の場において既存の登録商標と商品の出所の誤認混同をきたすおそれがない出願商標の登録までを認めない結果となり,多数の登録商標が不使用のものを含めて累積している現状において,既存の登録商標の保護をいたずらに重くするばかりでなく,商標制度全体の運営が実際の取引社会の需要に応じきれない事態を招くとの非難をまぬがれられないことになると危惧される」からとする(東京高裁平成8年4月17日判決,知裁集8巻2号406頁,判例評釈田村善之,ジュリスト1140号136頁)。「Columbia」事件では,著名なレコード会社「日本コロンビア」は印刷物等に対して有する登録商標「Columbia」に基づいて,世界的に著名な映画会社「コロンビア・ピクャーズ」のやはり印刷物等に対する商標「Columbia Pictures IndustriesInc.」が登録になったので無効審判を請求した。無効審判は認められなかったが,これは「Columbia Pictures」が商標の要部であって,「Columbia」とは類似しないとするものである(最高裁平成4年10月24日判決,判例工業所有権法[二期版]7213の32頁)。そもそも「Columbia」は米国の州名であり,又南米の国名であるから,「GEORGlA」(最高裁昭和61年1月23日判例時報1186号131頁,判例評釈満田重昭,判例時報1243号208頁)と同様に,一般的に独占権を与えるべきではないほうの名称に属する。
 5.損害賠償に関して,「筑後の国寒梅」の「寒梅」を「筑後の国」よりも大きくした場合に,侵害を認定し,それが平成2年から平成7年にわたり,Xが訴えに出た時点で,「筑後の寒梅」で全体の文字を同一の大きさのものに変更した。6年間にわたり訴追しなかった点をどう見るか。「Yの販売力もY標章1ないし3を付した清酒の販売に寄与している」と認め,販売額の2%がXの損害と相当因果関係ありと認定した。Yが使用する商標を変更したことによって,完全に損害が発生しなくなったと認定したと見てよいか。変更後の標章は変更前の標章の余韻を残していると思われないかどうか。


(くくみなと しんいち:青森中央学院大学経営法学部教授)